アオヤマの「和惣菜」への貢献度は日本で一番です
全国のスーパーマーケットを年間1000店舗以上訪問している、ショッピングアドバイザーの今野保氏。生活者の立場に立った店舗運営を提案する一方、テレビ・雑誌などを通じて「いいものを楽しく、安く、賢く買うための知恵」を生活者に紹介する活動を続けられています。自らも大手スーパーに20年の勤務経験があり、小売業の裏側を知り尽くした今野氏に、アオヤマの和惣菜について聞きました。
- アオヤマの和惣菜について、どういう感想を持たれていますか?
- スーパーマーケットが今日、生き残ってこられた一番の理由は、「惣菜」の貢献度がすごく高いからです。魚、肉、野菜だけを売っているスーパーは、それほどお客さんに支持されてません。スーパーが家庭にとって大きな存在になったのは、惣菜をどこの小売業界よりも早く売りだしたからと言えます。その中で、アオヤマさんの「和惣菜」への貢献度は、間違いなく日本で一番です。和惣菜とはこういうものなんだと、アオヤマさんが全国のスーパーに知らしめたんです。
- アオヤマが和惣菜に日本一の貢献をしているとは、ありがたい話です。
- 今、和の惣菜が見直されています。地元密着型のスーパーをつくるときは、和惣菜が必要な時代なんです。隣のおばあちゃんが、おいしいと言っているものをつくらないと、固定客やファンができないんです。
惣菜は1980年代半ばから伸び出して、2000年に入ってちょっと頭打ちになるんです。その時に、惣菜の中でも和惣菜を強化しなければいけないというスーパーが増えてきたんです。洋惣菜はレシピが外国から入ってきているので、味が全国で均一化しています。どこの地域でも通用します。でも、和惣菜の場合は、東北と九州で味付けが全く違うんです。和惣菜って、難しいからなかなかスーパーも入り込めなかったんです。
その中で、アオヤマさんが和惣菜のコンセプトを最初につくったわけです。地域の味を大事にして、家庭用の小さい鍋で味の均一化を図って、地元の味でおいしいものを継続的に出していれば、近所のおばちゃんが支持してくれるんだ、と。
- 確かにアオヤマの和惣菜の特徴は、家庭用鍋での調理です。
その点はどう思われますか? - 正直なところ、最初は「めんどくさ、ようこんなのやってるな」と思いましたよ(笑)。でも、和惣菜で味を均一化するのは、この方法しかないんだ、と説明を受けましてね。こんなめんどくさいことを、社長がやりきってるんだから、すごいなと思いましたよ。
スーパーマーケットの悪いところは、単価を安くするために、すぐに効率を追うことです。でも、和惣菜では全く通用しないんです。効率を追えば、味が落ちるんですよ。非効率でも、小さい鍋でコトコトと地元のお母さんたちが作り上げていく。これが和惣菜の原点です。それをスーパーに教えてくれたのが、アオヤマさんです。
大手の量販店やコンビニエンスストアは、巨大化した仕組みを作っていますが、和惣菜には手を出せない。手を出して、失敗を何度も繰り返しています。お客さんに支持されないんです。今、スーパーも目を覚まして、アオヤマさんの家庭用鍋で調理するやり方を自分の店に持って帰って、真似し始めていますよ。
- 和食を作る家庭が減っていますが、アオヤマの和惣菜は今後も生き残っていけると思いますか?
- 地元高松で頑固にあの味を守り続けている限り、絶対に残っていきますね。確かに、スーパーのお客さんは、和惣菜を自分の家で作らなくなっています。お客さんにアンケートを取ると、おいしい和惣菜を作っているスーパーを探すことがキーワードになっているんです。おいしい和惣菜は自分で作るのではなく、探すんです。東京のお客さんを例にあげると、おいしいものを作っているスーパーマケットを見つけることが、主婦の一番大事なことだと言われているんです。
例えば主婦が夕食に5品出すなら、5品全部作るわけじゃなくて「1~2品はあのスーパーの惣菜でいいか」となるわけです。その際、おいしいものを作っているスーパーを探す、というのが今の傾向です。和惣菜は、お客さんのキーワードにぴったりはまっているんです。
- 最後にアオヤマの和惣菜づくりにエールをいただけないでしょうか?
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和惣菜は主食になりません。卯の花定食やゴボウ煮定食って、ないですよね。サンマだったら、一匹で主食になります。調理もそんなに手間がかかりません。とっても手がかかる副菜、つまり和惣菜は、だんだんと主婦が手を引き始めているんです。メインのおかずじゃないのなら、作るのがめんどうだし、買えばいいや、と。
だから、アオヤマさんは味を頑固に続ける限り、今後も伸びると思います。家庭用の小鍋をやめたり、効率化を追ったり、マニュアルを変えたりすると、ダメだと思います。一番、味の変化がわかるのはお客さんなんですよ。毎日作っている人よりも、毎日食べている人のほうがよく知っています。毎日食べている人から、味が変わったと言われたらおしまいです。アオヤマさんには、今のやり方を貫き通してほしいですね。